White Noiz

諸々。

プログレッシブ・ロックの巨星、墜つ。

メタル界でも屈指のベーシスト、ビリー・シーンがRUSHのドラマー、ニール・パートの訃報を告げた。

呆然とした。
頭が真っ白になった。
ショックで言葉に詰まった。
そして、ほんの数分だけ泣いた。
Dream Theaterのマイク・ポートノイと並んで大好きなドラマーだった。
ニールは大好きだったドラマー、"渡り鳥"ことコージー・パウエルと同じ、ヴァルハラの英霊達の列に加わった。

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バンダースナッチ-あとがき

この「バンダースナッチ」という作品は、2019の夏コミで「創作集団スター・ボード」より頒布された「怪盗三題話」へ上津響也名義で寄稿した作品です。

今回のお題は「怪盗」「レトロ」「吹奏楽部」の3つのキーワードを作品の中に入れることでした。
しかし、怪盗で吹奏楽部ですよ。あなた。
学園モノのミステリーかコメディかの二択じゃないですかこんなもの。
だから敢えて場を学園とはせずに球場にしてみたわけですが、やっぱりミステリーちっくなコメディにしかならなかったという。
一応、オカルトか伝奇かっていう感じのそれっぽいSFにはしてみましたが。
ミステリーって実は苦手でして。
謎解きがメインのミステリーってのは、仕掛けと謎解きの両方を仕込まなければなりません。
必然的に整合性をきっちりしなきゃいけないわけですし、当たり前のように長くなる。
短くするには兎に角内容を詰め込まなきゃならない。ごちゃっとして短編にゃ向かないと思うんです。
という拙作の言い訳でした。

あと、今回はじめて縦書きのエディタを使ってみたんですが、これがなかなか良くできてまして。
TATEditorっていうんですけどね、かなり高機能で使いやすいです。

www.cc4966.net
ところがBlogに移植してみて分かったんですけど、やっぱ寄稿のレイアウトを意識して文字数とかを調整してると、Blogでは読みにくい。
まぁ、分かってた事ではあるんですけど、これはこれでなかなか悩ましいですね。
たぶん、Blogで読むより紙面や電子書籍の方が読みやすいんじゃないかと思います。
やっぱ電書化するかなぁ。過去作品も結構溜まってきたことだし。
なーんてことをぼんやりと考えてたりする今日このごろだったりします。

バンダースナッチ (4)

 別に忘れてたってわけじゃないんだけどな――
 弘美は、先ほど球場の片隅で見つけた発煙筒の一本を握りしめて思っている。発煙筒には油性ペンで書かれた汚い字が踊っている。
『怪盗バンダースナッチ参上!』
 まさか、五色の鈴緒とバンダースナッチが、全く別の事件だとは思わないじゃない――
 弘美は考える。五色の鈴緒と発煙筒という組み合わせは、とても不自然だ。もちろん、大掛かりで複雑な五色の鈴緒で仕掛けられた術式と、怪盗バンダースナッチといういかにも稚拙なネーミングもまったく一致しない。だとすれば、このふたつは全く別のものだと考えたほうがまだしっくり来る。
 ならば五色の鈴緒による術式が破られた今でもバンダースナッチの事件は何も解決していないはず――
 そう考える方が自然だ。
 試合を奪うという予告状を出した怪盗と発煙筒。この組み合わせから考えられる可能性はふたつ。火事と思わせて試合を中止させる。もしくは、火事とみせかけてその混乱に乗じて逃げる。このふたつだろう。
 試合を奪うという予告状を出している以上、可能性が高いのは、前者の「試合を中止させて没収試合にする」だろうか。
 しかし、火事くらいで没収試合にできるのかな――
 そんなことを考えながら弘美は歩いている。

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バンダースナッチ (3)

 周一は自転車を全力で漕いで、庚申堂へと向かっていた。
 人使い荒過ぎだっつの――
 心の中で悪態をつきながら、必死にママチャリのペダルを漕ぐ。
 周一が気絶から目を覚ますと、不機嫌な顔の克基と、心配そうに周一を覗き込む千聖の姿があった。周囲は公園。一体何が起こったのか分からなかったが、次第に記憶が蘇ってきた。首塚に貼られていた鈴と札を引き剥がそうとしてぶっ倒れたのだ。
 不機嫌な表情をした克基は、周一の無事を確認すると鬼の首塚を調べ、周一に首塚を見張っているように指示し、そのまま球場へと戻っていった。
 そして、しばらく周一が近くのベンチで暇を持て余していると、今度は克基が生徒会スタッフを伴って鬼の首塚の前にやってきた。その場で周一は克基から怪しい御札を渡され、よくわからないまま平橋公園から南西にある庚申堂に行くように言われたのだった。

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バンダースナッチ (2)

 弘美は、電話口で兄の浩平に克基に言われた通りのことを話した。
「ふぅん、群青色の鈴緒ねぇ」
「どう?心当たりはある?」
 弘美と浩平の家は、代々平橋市にある天平八大龍王社の宮司だ。現在、弘美の父が宮司を務めており、浩平はそれを継ぐための修行の真っ最中という立場にある。
「いや、群青色の一色というのはさすがに見たことがないね」
「やっぱりかー」
 一応、弘美も代々神社の神職を務める家系の子女だ。それなりに知識はあるつもりだ。それでも、群青一色の鈴緒なんていうものは見たことも聞いたこともなかった。
 神職の知識や作法を正式に学んでいるだけでなく個人的な浩平の趣味といった意味でも、弘美よりもはるかにこういったことに造詣が深い浩平が知らない事となると、かなりのレアケースと言ってもいいだろう。
「そもそも神道で言えば藍か紫だよね。群青色というのは、ない」
 やっぱりそうなんだ――
 弘美は自分の半端な知識が間違ってないことに安心する。

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バンダースナッチ (1)

「来ル七月十日、高等学校野球選手権県大会ニ於イテ、御校、平橋高等学校ト、対戦校、桜帝高等学校ノ試合ヲ、頂戴仕る。怪盗バンダースナッチ
 平橋高校の生徒会室に届けられた手紙には、そう書かれてあった。

 奇妙な老人だった。
 真っ白になった髪を無造作に後ろで束ねており、日焼けした広い額には深いシワが刻み込まれていた。腰は曲がっておらず160センチを超える身長のせいか、どことなくかくしゃくとした印象を受ける。しかし、長く伸び切った白い眉や髭を見ると、ゆうに八十を超えているように思える。その白く伸び切った眉や髭、皺に隠されて表情はまったく見えない。 
「かなりお困りのようだが?」
 交差点に落ちたやけに長い影が嗤った気がした。
 児玉将大は動揺していた。交叉点の悪魔の話を思い出していた。

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アニメ版「ピアノの森」 ショパン・コンクールまでの雑感

ネットフリックスでアニメ版「ピアノの森」を観始めた。

あれね。
イチノセ カイって「世界一の」のアナグラムなのかね。
もしかしたら、まんま「一の世界」なのかもしれんけど。

どうしても、「四月は君の嘘」と比較してしまうな。
主人公のように見えるカイって実は主人公じゃねぇんじゃねーの?って思ってしまう。
どちらかというと、雨宮の方が主人公に見えるのはオレだけだろうか。
丸山が出てきて、三つ巴の群像劇風になるかと思いきや、そういうわけでもなく、丸山がヒロインの座に収まるわけでもなく。

こういう系統の物語というのは、どうしても演者の深みを出すために悲劇を盛り込みがちなのだけども、アニメ版だからなのか、どうもカイの人物描写が薄い。
確かに逆境とも言える生い立ちを背負っているものの、カイはそれを気に病んでいる風でもなく、飄々と育ったように見える。

確かに作中の事件はいろいろあるのだけども、カイの立ち直りの速いカラッとした性格は、人としての深みを盛り込むだけの懊悩を抱えるように思えないのだ。
もちろん、優しさは表現できると思うのだけど、憤怒や慟哭は無縁のような性格に見える。

ショパン・コンクールで出てくる回想に至って、漸く色々ひどい目にあったというそれっぽいシーンが出てくるものの、それはあまりにも唐突過ぎて取って付けたような印象しか残らなかった。
説得力が足りない感じ。
コミック版だとどうなんだろう?やっぱり色々あるのかな。アニメ版だから省かれてるだけなのかな。

ここまで書いておいてなんだけど、結局、オレは「不幸な生い立ちの天才が成功するサクセスストーリー」には興味がないんだなって。
「凡人が歯ぁ食いしばって天才に追い縋る話」が好きなんだろうな。

楽曲の省き方もなんかちょっと中途半端な気がするし、期待していただけにちょっと残念。

とは言うものの、全体的に見れば面白いし、演奏も素晴らしいのでちゃんと見れてます。


一番好きなシーンはショパン・コンクールで「拳!!!」のところです。