White Noiz

諸々。

2019-08-31から1日間の記事一覧

バンダースナッチ-あとがき

この「バンダースナッチ」という作品は、2019の夏コミで「創作集団スター・ボード」より頒布された「怪盗三題話」へ上津響也名義で寄稿した作品です。 今回のお題は「怪盗」「レトロ」「吹奏楽部」の3つのキーワードを作品の中に入れることでした。 しかし、…

バンダースナッチ (4)

別に忘れてたってわけじゃないんだけどな―― 弘美は、先ほど球場の片隅で見つけた発煙筒の一本を握りしめて思っている。発煙筒には油性ペンで書かれた汚い字が踊っている。 『怪盗バンダースナッチ参上!』 まさか、五色の鈴緒とバンダースナッチが、全く別の…

バンダースナッチ (3)

周一は自転車を全力で漕いで、庚申堂へと向かっていた。 人使い荒過ぎだっつの―― 心の中で悪態をつきながら、必死にママチャリのペダルを漕ぐ。 周一が気絶から目を覚ますと、不機嫌な顔の克基と、心配そうに周一を覗き込む千聖の姿があった。周囲は公園。一…

バンダースナッチ (2)

弘美は、電話口で兄の浩平に克基に言われた通りのことを話した。 「ふぅん、群青色の鈴緒ねぇ」 「どう?心当たりはある?」 弘美と浩平の家は、代々平橋市にある天平八大龍王社の宮司だ。現在、弘美の父が宮司を務めており、浩平はそれを継ぐための修行の真…

バンダースナッチ (1)

「来ル七月十日、高等学校野球選手権県大会ニ於イテ、御校、平橋高等学校ト、対戦校、桜帝高等学校ノ試合ヲ、頂戴仕る。怪盗バンダースナッチ」 平橋高校の生徒会室に届けられた手紙には、そう書かれてあった。 奇妙な老人だった。 真っ白になった髪を無造作…