White Noiz

諸々。

Noisereduction

 その街の夜は喧騒に溢れていた。
 ネオンが忙しなく明滅し、雑踏と排気音とビートの効いた音楽が綯い交ぜになって暗闇を追い払っていた。
 不夜城の人混みの中を縫うようにして男は歩いていた。
 やや広くなった額に、黒髪の中に見え隠れする白髪。年の頃は四十代なかばといったところだろうか。
 サイバネティクスによる若返りが可能となった昨今では、珍しい「年齢」と言えるだろう。
 しかし、それでも四十代とは思えないほどの、そして雑踏を歩くという速度とは思えないほどの身のこなしをしていた。スムーズに歩けるほどの隙間もない雑踏の中を、肩もぶつけずにスルスルと進んでいく。

 男は事件を追っていた。
 一週間ほど前に依頼された調査は、「事件」と言ってもいい厄介なシロモノへと変貌していた。
 確かに通称「安全局」と呼ばれる非正規の機関から請けるような調査が、まともなものだった試しなどありはしなかったのだが。それでも金払いは良かったから、ついつい二つ返事で引き受けてしまった。
 男は気安く請け負ってしまった事を後悔していた。
「もっとふっかけておけばよかった」
 そうひとりごちた後、男は足を止めた。
「何の用だ?」
 男の前を遮るように女が立っていた。
「アンタ、人の話を聞かないタイプでしょ」
 ダークブラウンのパンツスーツをきっちり着こなした若い女は、男を睨め付けながら言い切った。
「余計なお世話だ」
 男は女を避けて進もうとするが、女はそれを許さない。先読みしたかのように男の前に立ちはだかる。
「『局』に言われたでしょ?アタシを上手く使いなさいって」
 腰に両手をあてて男を見るスーツ姿は、ネオン街の雑踏の中では目立つのだろう。周囲を行き過ぎる男たちが野卑な口笛を吹きながら通り過ぎて行く。
 女はそれをキッ睨む。
「どんなに便利だろうと、使いたくない道具っていうのは存在するんだよ」
 男はつぶやくようにして吐き捨てた。
 それを耳にした女は、再び男を睨みつける。
「それってどういう意味よ?」
「オレがアンタを嫌いだってことさ」
 男が女から視線を反らした。何かを見つけたといった表情で、女の右後方を見据えて舌打ちをした。
 女も男の視線を追いかける。
「何……?」
 視線の先には雑踏があるだけだった。
 慌てて振り返った女の目の前から男は消え失せていた。

 メテオ・カタストロフから四十年が経つ。
 キリスト教イスラム教の聖地へと落下した隕石は、地上に辿り着く前に燃え尽きた。しかし、それでもその衝撃波は中東と呼ばれていた地域を蒸発させ、地中海周辺の国々を海の中へと飲み込んだ。
 カタストロフは人類を進化させて、そして退化させた。サイバネティックテクノロジーをはじめとする肉体の強化は、欧州の過酷な環境を克服する為の必然であった。テクノロジーは人類を半ば不老不死の化物へと進化させた。
 その一方で生身の身体に対して「改良」を加えるといった禁忌は忘れ去られていった。中東や欧州から遠く離れた極東やオセアニア、米大陸の宗教者はその危険性を声高に叫び続けた。しかし、肉体の劣化と死、そして過酷な環境という現実の前では、魂の劣化など取るに足らないものだと誰も耳を貸そうともしなかった。
 やがて「生身の身体」に拘り続ける人々は、進化を受け入れられない人々だとされ、社会的に隅に追いやられていった。
 そういった生身の人々がオーストラリアに集まり、国家を形成して十二年。閉鎖的な国家形態の中で独自の精神文化を築きあげたとも噂されていた。
 やがて世界は「宗教」ではなく「エクステクノス-拡張技術」と「サモニケーション-交信召喚」という思想によって分断されるようになっていた。

「それで?ユキトを取り逃がしたって?」
「……はい。申し訳ありません……」
 ネオンが煌めくビルの谷間。男-ユキトを見失ってまだ三分と経っていない。
 薄暗い影の中で女-ジェシカは身をすくめた。
「まったく、何をやってるんだ……」
 ジェシカの直属の上司がため息をついた。
「本当に申し訳ありません……」
 ほんの一瞬の隙を突かれた。忸怩たる思いがある。
「まぁ、相手はあのトウドウだ。仕方ないと言えなくもないが……」
「失礼ですが、その……。トウドウはそれほどの?」
 ジェシカにとってのユキト・トウドウは冴えない壮年のおっさんといった印象でしかなかった。
 だからこその油断があったとも言えるのだが、ジェシカにとってはそれは青天の霹靂でしかない。
 上司は苦笑しながらジェシカの問いに答えた。
「気をつけろ。あの男なら、いつの間にかキミの後ろに立っていても不思議ではない」
 ユキトとは一体何者なのだろうか?ジェシカは考える。
 「局」の機密であった筈の今回の案件を任された事といい、上司にそこまで言わせしめる事といい。
「次に現れそうな場所の目星はついているのか?」
「はい。恐らくはセパテスの店かと」
 セパテスはユキトが姿を消した場所から七百メートルと離れていない。非合法ドラッグの巣窟となっている店だ。
「なるほど。それならばすぐに行き給え」
「はい」
「今度は逃げられないようにな」
 ジェシカは思い切って聞いてみる事にした。ユキトとは何者なのかを。
「ユキトとは、ニンジャなのですか?」
「なるほど、ニンジャか」
 上司が笑いをこらえているのが分かった。
「まぁ、似たようなものだな。気をつけ給えよ」
 そして通信は切れた。

 店内は酷い有様だった。
 虚ろな目と弛緩しきった身体を安っぽいソファに横たえた客などどこにも居なかった。
 ガタイの良いガードマンと思しき男や、どう考えても違法な拡張をしたような異形の者が転がっていた。ある者は壁を突き破り、ある者はソファを真っ二つに叩き折り、思い思いの姿で伸びていた。
 一体どんな事をすればこのような事になるのかとジェシカは不思議に思った。
 まるで竜巻でも通り過ぎたかのような惨状だった。
 店の一番奥まで進むと意味不明の恫喝が聞こえてきた。
 意識がある者がいる。自分以外にこの店の者を襲撃した者が居る。つまりユキトはまだこの店に居る。ジェシカは安堵した。
「そんなことはどうでもいいからさ。この男の居場所をさっさと喋ってくんないかな」
 先程聞こえた恫喝から比べると何とも呑気な口調が聞こえてくる。
「知らないなんてぇのはナシにしようか?」
 不意に怒号が店内を震わせた。次の瞬間、違法な拡張を施したごつい男が壁を突き破って飛んできた。
 ジェシカはそれをひょいと一歩後ろに下がってやり過ごす。
「さて、少しは話してみる気になったかなぁ?」
 崩れた壁の向こうからユキトが姿を現した。ジェシカを見て足を止める。
「おや?またお会いしましたね」
 どこまでトボケたおっさんだ。ジェシカはイライラしながら壁を突き破って飛んできた違法サイボーグを指差して言い放った。
「こんな真似して!!何をやっているんですか?!」
「何って……聞き込みを……」
 ユキトは苦笑をしながら頭を掻いている。
「こんなやり方してたら警察がすっ飛んできますよ?!」
「いや、まぁ、うん。来る前に逃げるから……」
 ジェシカは頭を抱えた。
「ここに転がっている被害者だけでなく、目撃者も山ほどいるでしょうに……。手配されますよ?」
「そりゃ、アンタ等がなんとかしてくれるんだろ?その為にアンタをオレに付けたんだろうし」
 こいつ。ダメだ。そう思ってジェシカは天を仰いだ。もっとも見えるのは空などではなく、ヒビの入った薄暗い天井だったが。
「……で、何か情報は掴めたんですか?」
「とりあえずは、な」
 ユキトは左手でメモリユニットを軽く振りながらニヤリと笑った。
「だから、あとはこいつからターゲットの居場所を聞き出してずらかるだけなんだよな」
「聞き出すって……伸びてますよ」
「……ありゃー。ホントだ」
 違法サイボーグは頭部ユニットから火花を散らして白目を剥いていた。
「手加減したはずなんだがなぁ。どうしようか?」
「アタシに聞かないでっ!!!」

 ユキトの事務所はネオン街からさほど離れていない場所にあった。
 雑居ビルの二階にあるその事務所の扉には「トウドウ・エージェンシー」という文字が書かれたプレートがぶら下がっていた。
「何の事務所なんだかさっぱり分からなくない?」
 ジェシカが扉の前で腕を組むと、ユキトはニヤリと笑って何も答えなかった。
 ユキトが鍵を開けると、あまり生活感のない空間が広がっていた。事務所らしいと言えば事務机の上に置かれた端末くらいなもので、あとは殺風景とも言えるほど何もなかった。
「ますます何をやってるのか分からないところね」
「だからこういう仕事が務まるのさ」
 ユキトはメモリーユニットを端末に挿し込んでモニターを立ち上げた。
「何か飲むか?」
 ユキトは奥のキッチンからペットボトルを取り出してそのまま口をつけて中身をがぶ飲みする。
「いらない」
 ジェシカは短く答えてモニターを食い入るように見つめている。
 やがてモニターはホワイトノイズを映し出しはじめる。
「映像?」
「らしいな」
 ペットボトルを片手にデスクの椅子に落ち着いたユキトは、キーボードを引き寄せ文字を打ち込み始める。
「暗号化されてる?」
 ジェシカはそう言いながらモニターを指差した。
「どうやらそうらしいな」
「解ける?」
「もちろん」
 静寂の中、ユキトがタイピングする音だけが響く。
 やがて、ユキトが息をつく。
「できた?」
「あぁ。さて、何が出てくるのやら」
 ユキトがエンターキーを派手に押し込んだ瞬間、モニターは像を結んだ。
 モニターに映し出されたのは満員御礼と言っていいほどの人。そして熱狂、怒声、野次。薄暗い空間の真ん中にリング。
「……試合?」
 ジェシカが目を細めながら訊く。
「こりゃぁ……地下闘技場ってやつだな」
「なるほど。ってぇことは?」
 ユキトがため息を付きながら答えた。
「ターゲットは地下闘技場の賭博で派手に負けてしまって、身元がバレたっていうパターンだろ?」
「なーるほどねー」
 ジェシカの声にも呆れてやってられないという響きが混じっていた。

ホワイトノイズ。
おい、ノイズを消せよ。何が見える?
リングの真ん中に立ってるヤツ。
あれは……アイツは……。
クソッタレ。まだ生きていやがったのか。
あの時の悪夢そのものだ。
ペットボトルがモニターにぶつかり、鈍い音を立てて床に転がった。

現代のエクステクノスにはいくつかの課題があります。
その最もたるものが「反応速度」です。
エクステクノスは人類に驚異的な頑丈さと筋力を与えてくれました。
しかし、脳神経と身体を繋ぐ神経系についてはまだまだ生身の人間には及びません。
この脳神経と身体の各神経を繋ぐ技術が確立し、人間の反応速度を超えた時、はじめて人類は新たなる段階へと進むことができるのです……。

やめとけって。アイツはヤバい。まともじゃねぇ。
いや、やる。
アイツは今までのヤツとは違うの分かってんだろ?
それでも、やる。
反応速度が尋常じゃねぇんだって。人のそれを上回ってやがる。
見りゃ分かるよ。そんなもん。
反応速度でもスピードでも馬力でも何一つ勝てる要素なんてねぇんだぞ?何故そこまでやる必要がある?
オレが大事にしてたもん、根こそぎ奪って行きやがったからだよ。

かつて中東と呼ばれたエリアのクレーターの中から見つかったこの物質は、地球上の物質とは異なる性質を持っております。
この「ヘギオス」と命名された物質により、新たなる神経系の可能性が見えて来ました……。

おい!大丈夫か?!おい!!
あぁ、生きてるよ。
マジックだよ!おめぇすげぇよ!あんなバケモノに勝っちまうなんて!!
まぁな。結構殴られたけどな。
流石に生きて帰ってくるとは思ってなかったぜ。
お陰様でいい男が台無しだよ。
ジャガ芋みたいなツラになってんな。
うるせーよ。

ホワイトノイズ。
うるせーよ。
ノイズを消せよ。
ノイズを消せよ!!

「やる必要なんてないんじゃないの?」
 ジェシカの声が肩越しから聞こえてきた。
「ターゲットは無事に救出したんだし、仕事としてはこれでオシマイなんでしょ?」
 またこんな会話か。ユキトは心の中でため息をついた。
「いや、やる」
 吐いて出てきた言葉が十二年前と全く同じセリフだった。苦笑する。
「何がおかしいのよ」
 ジェシカは憮然とした声を出し、いかにも不満気に肩でユキトの肩を突き飛ばした。
「アンタ、人の話を聞かないタイプでしょ」
「前にも言われた」
「知ってるわよ。そんなこと」
 ひっきりなしに鳴っていた銃声が途切れ始めた。
「さて、それじゃぁ行くか」
「死んだら絶対許さない!!」
 ジェシカが立ち上がり、地下闘技場のガードマンから奪ったサブマシンガンの弾を派手にバラ撒き始めた。

「『局』はどんだけ人員を投入したのやら」
 気づけば周囲には誰もいない。ユキトはたった一人で十二年前の悪夢と対峙していた。
 巨大な野太刀を構えた赤備えの鎧武者。つくづく趣味が悪いとユキトは思う。
 まるで二十世紀のゲームから現実世界に迷い込んだようなその姿は、滑稽ですらあった。
 今はそんな下らない事を考える余裕すらある。当然ながら、十二年前はそんな余裕はなかった。まさか、一対一の状況に持ち込めるとまでは思っていなかったが。
 神経を研ぎ澄ませ。
 生身の人間の反応速度はエクステクノスはおろか、ヘギオスすらも凌駕する。
 たぶん。
 神経を研ぎ澄ませ。
 前回は野太刀を奪い取るまでに時間がかかりすぎた。そのぶんスタミナを奪われ、掌握が不完全になった。
 組討ちへと持ち込まれ、手甲の拳で数発殴られた。
 そこからの記憶は途切れていた。
 神経を研ぎ澄ませ。
 両断された屍。護るべき愛しい女性の慙死。憤怒の虜となった自分。
 今はもう遠い昔の話。
 もう、やる必要なんてない。
 けれども、決着は付けなければいけない。
 命からがらもぎ取った勝負。あれが偶然ではなかった事を証明しなければならない。
 あの仇討ちが幻ではなかったのだと証明しなければならない。
 ノイズまみれの悪夢から抜け出す為にも。

 どうやったら無傷で勝てるのか。そればかりを考えて来た。
 どうやったら完全に勝てるのか。十二年間そればかりを考えてきた。
 どうやって勝ったのか覚えてなどいなかった。
 勝ったことは分かっていたが、どこにもそんな実感は存在しなかった。
 そんな悪夢を振り払う為に。
 幻ではないと自分に言い聞かせる為に。

 右足を一歩前へ。左足を蹴り足へ。腕に仕込んだ手甲で袈裟斬りを逸らす為に左腕は軽く斜めに構える。右腕は肘を軽く曲げて正中線で構える。
 すり足で間合いを測る。
 赤備えの甲冑は右肩に刀身を担いだ変形の八相の構え。こちらもジリジリと間合いを測る。
 チリチリと産毛がそそり立つ。尋常ではない圧を感じる。辛抱できずに飛び出しそうになる。だが、まだ僅かに間合いの外だ。
 …………。
 ここ。
 ノーモーションで蹴り足に力を込める。飛び上がるでもなく、真っ直ぐ赤備えの懐へ飛び込む。同時に右の拳を突き出す。
 赤備えが反応する。巨大な野太刀を右の袈裟斬りと見せかけて逆手に持ち替え、左下から切り上げる逆袈裟へ。速い。
 かかった。右脇ががら空きなのは誘いだ。
 左腕は既に自分の右の拳の下を潜り、赤備えの手首をつかもうと伸ばしている。躊躇なく飛び込んだ間合い潰しによって刀身は既に届かない。
 それでも赤備えの野太刀は柄で脇を突いて来た。
 その柄を握る赤備えの右手首をつかみ、そのままの勢いを殺さずにいなす。同時に右の肘で赤備えの手の甲を討ち、右脇で野太刀を絡め取る。
 浮いた赤備えの身体をうつ伏せに引き倒し、肩甲骨に自分の左膝を当てて赤備えの右腕を上に引き上げて片羽固めで極める。
 極めただけでなく、そのまま躊躇なく折る。
 赤備えはうめき声すらあげなかった。左腕の膂力だけで、体重を預けたユキトの身体ごと持ち上げようとしていた。
 何かがおかしい。そう思った瞬間、鉄槌の一撃が赤備えの頚椎に突き刺さった。
 顔をあげると、ジェシカが渾身の力で赤備えの頚椎に鉄槌を振り下ろしていた。
 ジェシカの一撃でヘギオスを破壊された機械人形は、一切の活動を止めた。

「ちょっと!どこいくのよ!」
 決着がついたその場を急ぎ足で去ろうとするユキトを慌ててジェシカが呼び止める。
 鉄槌によって粉砕された赤備え頸部に血が流れていないのを見て、ユキトの頭の中は混乱していた。
「帰る」
 決着はついた。だが今回も完全に勝ったとは言い難い。いや、前回よりも納得の行かない結果となってしまった。
 それどころか、自分が戦っていた相手が人ではなかったのだ。自分は一体何と戦っていたのだろうか?
 そんな思いがユキトの中で完全に行き場を失っていた。
「何怒ってんのよ?」
 ジェシカがユキトの肩をつかむ。ユキトは振り返って怒鳴った。
「お前の上司に言っとけ!地下闘技場の賭場にターゲットを仕込むなんて手の込んだ事やってんじゃねえよってな!!」
「あー。バレてましたか」
 ジェシカは気まずそうにユキトから目を逸した。
「十二年前のあの件を引きずってる事なんてのは、おめぇ等にはお見通しだろうしな!!」
「いや、ほんっとごめんなさい……」
 手を合わせてユキトを拝むジェシカ。しかし、あまり悪びれているようには見えない。
「おめぇに謝られたってしょうがねぇんだよ!!ヘギオスの流出なんてのが例え『局』の失態だったとしてもだ!」
「そこまでお見通しですか」
「しかも、何だよあれは!既に人体の拡張を飛び越えてんじゃねぇか!!」
 激昂するユキトの周囲を無言の男たちが銃を構えて取り囲んだ。
「何の真似だ?」
「ちゃんと説明しますんで、『局』まで同行して欲しいなー。なんてね?」
 ユキトは深々と溜め息を吐いた。
「ここで暴れてもいいんだがな?」
「あーっと、ごめんなさいごめんなさい。銃、降ろして。ほら、みんな降ろして」
 男たちが戸惑いながら銃を降ろした瞬間、ユキトは間近に居た局員の銃を奪い、発砲した。
「え?ちょっと!!」
 ジェシカをはじめ、局員達が床に伏せる。
 二秒ほど間が空いたが何も起きない。
 ジェシカが恐る恐る顔をあげてみると、ユキトの姿はどこにもなかった。
「えー……マジでニンジャかよぉ」
 ジェシカはぶーたれながら床の上で頬杖をつくしかなかった。
 
-了-

あとがき。
どうも。相変わらずの「締め切り前の魔術師」っぷりを発揮している上津です。
今回の締め切りは十一月二十日だそうで。
いま、このあとがきを書いているのが十一月十九日、午後十一時十分です。
ほんの数分前、このNoisereductionを書き上げました。
このNoisereduction、一行目を書き始めたのが十一月十八日でした。
あとはわかるな?わたしがなぜ締め切り前の魔術師と呼ばれているのかを。
閑話休題
前回さ。SHADOWLESSで「ネオン」っていう言葉使ったのですよ。冒頭のシーンで。
にも関わらずさ、今回の三題話のキーワードのひとつがですよ。「ネオン」なわけですよ。
ちょーっとちょとこれなくなくない?(ラップ風)
しかも「機械人形」て。ハードボイルドSF書けって言うてるようなもんじゃないっすか。
これはアレですか?逃げたら負けの挑戦状ですか?だったら受けたろやないかい。
とか意気込んでみたものの、実際に書き始めるまでは世界設定もストーリーも曖昧だったという。
あまりにも長くなりそうだったんでシーン構成をフラッシュバック風にして諸々略してみたという。
だいたいそんな感じの作品です。

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