White Noiz

諸々。

お茶の間宇宙戦艦「帝釈天」

「コタツっつーもんがあるわけよ」
 その男はコタツで緑茶をすすりながらそう言った。
「炬燵って書いて『コタツ』って読むんだけどね。知ってる?」
 男の年齢はよくわからない。今どき時代錯誤も甚だしい整髪料をべったりとつけたサイドバック。にやけた口元。丸いサングラス。白いワイシャツ。ペーズリー柄なのに紺色のネクタイ。その上からハンテンを羽織っている。怪しさを絵に描いたような格好である。
「分かるわよ、それくらい」
 その向かい側でコタツに入っているのは、高校生くらいの女の子である。濃紺のブレザーに白いブラウス。透けるようなプラチナブロンドがウェーブしてコタツ布団まで伸びている。
 美少女である。誰もが認めざるを得ない美少女と言ってもいい。ただし、男を見る視線に軽蔑が満ちている。キリリと整った眉毛が片方釣り上がっている。クソがつくレベルで生意気そうである。
「みかん、食べる?」
 トボけた口調で男がコタツの上に積まれたみかんを娘に差し出す。
「いらない」
 娘は男のトボけた態度が気に入らなさそうである。「いらない」というセリフから苛立ちのトゲが30本ほど飛び出ていた。そのままそのセリフを咀嚼すれば悶絶必至であろうことは想像に難くない。
「あ、そう」
 男は悶絶必至のセリフのトゲを軽くスルーして、寿司の漢字がみっしりと書かれた湯呑に急須から緑茶を注いだ。
 娘は苛立ちを抑えるために深呼吸をするしかなかった。
 

 
 人類が恒常的に宇宙の開拓を始めてから、半世紀が過ぎていた。銀河を自由に飛び回るためのスペースシップは、積極的な宇宙移民政策を掲げる地球連合政府によって補助金がバラ撒かれた挙げ句、供給余剰の値崩れを起こして二束三文で市場に転がることとなった。
 一攫千金を夢見る大馬鹿野郎達はそんな二束三文の宇宙船を駆り、いまだ手付かずのまま残っているかもしれない資源や土地といった有象無象のお宝を求めて未開拓の恒星系へと飛び出したのである。
 
「いくら安くなったって言っても、コレって戦艦よね……」
 娘は目の前でミカンの繊維を綺麗に取ろうと苦戦している男から目を離して周囲を見渡した。
 男と娘が入っているコタツの周囲には無機質な空間が広々とひろがっていた。立体的に構成された10を超えるコンソールとシート。部屋全体を覆う全天球型のスクリーンモニター。そして、そのモニターには深い黒と無数の星々。
 誰がどう考えても、「スペース・シップ」だとか、「スペース・クルーザー」とかいうカテゴリーには収まらない規模の艦橋である。ガンシップ帝釈天」。これがこの宇宙戦艦の名前であることを娘はまだ知らない。当然、従来の「スペース・バトルシップ」というカテゴリーからも外れ、規格外の機動性と火力を誇るために特別にガンシップという名称が与えられていることも、現在は盗難にあい、地球連邦第三宇宙軍の登録から抹消されていることも知らない。
 そんな「帝釈天」の艦橋を見回して娘が軽くため息をついた。
「なんで誰もいないのかしら?」
「誰もいなくても運用できるからね」
 ミカンの房を3つくらいまとめて口に放り込んで頬張った男が、娘の独り言に答えた。若干モゴモゴ言っているため、正確には「ひゃれもいひゃくてもうんようひぇひるかりゃにぇ」と聞こえた。
 娘はそれを聞き返すような愚は決して犯さなかった。代わりに黙ったままコタツの上にあったミカンを男に投げつけた。ミカンは男の頭にポスンと当たり、ゴミひとつ落ちていない冷たい金属製の床にしばらくコロコロと転がっていたが、やがては息絶えるようにその動きを止めた。
「なんでアンタみたいな胡散臭いヤツが宇宙戦艦の艦橋に居座ってんのよ」
 娘は視線だけで絶対零度を実現させそうな冷たい眼差しで文句だか質問だか分からないようなセリフを吐いた。
 男はズレかかったサングラスをクイッと人差し指で直し高らかに言い放った。
「それは、わたしこそがこの特殊ガンシップ帝釈天』の艦長、シュウ・キサラギだからである!!」
 本人は拳を胸元で握りしめて力んでドヤ顔をしてはいるが、所詮はハンテンにコタツにミカンである。
 娘が投げたミカンがシュウの頭に当たって、またポスンと間抜けな音を立てた。
 
 惑星ラキシスは乗っ取られた。王族は捕縛された後、処刑された。
 娘、つまり皇女のみが星系外のハイスクールで学業に就いていたため、唯一難を逃れたのである。
 王女の名はアルセナ・イレーゼ・ラキシス
 惑星ラキシスの政変を知った彼女は、すぐさま行動を起こした。執事と数名のメイドを連れて身を隠そうとしたのである。
 ラキシスでの政変は、軍のトップであるトラント将軍が起こした軍事クーデターであった。トラント将軍が、皇女であるアルセナの身柄を拘束する可能性は高く、アルセナの判断は正しかった。
 しかし不幸なことに、アルセナの乗ったクルーザーは辺境の地で宇宙海賊に襲われてしまったのである。大慌てて救難信号を出したもののすぐに宇宙海賊に捕まってしまい、逃走資金に換金しようと持ち出した高価なものは全て奪われてしまったのであった。
 救難信号に反応し、おっとり刀でノロノロと駆けつけたのが、シュウの乗る帝釈天であった。事情を知らないシュウはとりあえず人命救助を優先した。その結果、アルセナの財産の一切合財は海賊に奪われたままとなってしまったのである。
 
『財産を取り返す手助けをしてあげてもいいのではないですか?』
 帝釈天の艦橋に中性的な声が響いた。
 アルセナが事の顛末を一通り話し終えたところである。
 シュウは相変わらずもぐもぐとミカンを食べている。
 アルセナはシュウ以外に人影が見当たらない艦橋を不思議そうに見渡している。
『わたしの名はインドラ。この帝釈天をコントロールする人工知能です』
 アルセナの疑問に答えるように、再び声が響いた。
「そうは言ってもよー。あいつら全力でケツまくってんだぜー」
 シュウはいかにも気が乗らなさそうな声で反論した。どれくらい気が乗らなさそうかというと、剥いたミカンの皮でタワーを作ろうとしているくらいであった。
「お礼は差し上げます」
 アルセナは苛立ちを噛み殺し、毅然とした態度で言った。
「……それになんかコイツ、偉そうだし」
 20cmほど積み上げたミカンの皮が、バランスを崩して倒れた。
 アルセナはミカンの皮タワーの基礎部分に、手元のミカンを投げつけてタワーを根こそぎ崩壊させた。
「それが真摯にお願いしているレディの話を聞く態度ですかっ!」
「それが真摯にお願いしている態度かよ!!」
 飛び交うミカン。コタツという名の塹壕。戦闘は熾烈を極めた。
『シュウ、遊んでないでちょっとは真面目に考えてください』
 痺れを切らしたインドラが割って入る。
「だってよー」
 飛び交うミカンが途切れてシュウがコタツの向こうから顔を出す。
『子供ですか、あなたは……』
「ほんっと、ガキみたい……」
「んだとぅ?!ガキが大人をガキ扱いしていいと思ってんのか!!」
『ちょっと頭冷やせつってんだろうが!テメェ等ぁ!!』
 戦闘はインドラも交えて三つ巴となり泥沼化していくのであった。
 
 アルセナ皇女執事、アレックスが帝釈天の艦橋に入った時、そこはミカンの戦場であった。あちこちにミカンとミカンの皮が転がり、無人である筈の艦橋のコンソールやシートにはミカンの残骸が鎮座していた。
 アレックスは海賊から皇女を守るために戦い、傷を負っていた。そのためシュウとの交渉は皇女が受持ち、アレックスは負傷の治療を行うよう皇女から厳命を受けていた。
 アルセナ皇女は威厳に満ちた心の広い御方でありシュウとの交渉に関しては、アレックスは何も心配していなかった。それだけに、艦橋に足を踏み入れた時の惨状は、アレックスの想像を超えていた。
 一体なにがあったのか……交渉は決裂したのか……。
 アレックスの中に忸怩たる思いが浮かぶ。
 わたしが付いていれば……。
「アレックス!」
 アルセナ皇女の声が響く。
 アルセナはシュウと一緒に艦橋の中央、コタツから5mほど離れた冷たい金属製の床の上に正座していた。
 これは一体どういうことなのか……。
「アレックス、ごめんなさい……」
 アレックスが向けた視線の意味に気づいた皇女がが身を竦ませる。
『わたしから説明しましょう』
 アルセナの声でもなく、正座しているシュウの声でもない。
『わたしはインドラ。この帝釈天を制御する人工知能です』
「戦艦の人工知能……ですか」
『驚かせてしまい、大変申し訳なく思っています。しかしながら、こうでもしなければこの二人は止められなかったのです』
 インドラは穏やかに状況を説明し始めた。
「一体、何があったのですか」
「いやぁ、そのなんつーかですね。このクソ生意気な娘が……」
 正座させられたシュウが、にこやかに手を挙げようとした。
『黙れ』
「あっはい……」
 インドラはシュウのセリフを瞬殺で蒸発させた。
「皇女殿下も何をしておられるのですか……」
「わたしは、その……反省させられているのです……」
「反省?」
 アレックスは拳をきつく握りしめた。
『ミカン大戦争です』
 言い難そうにしているアルセナの言葉をインドラが引き継いだ。
「ミカン……大戦争……」
 アレックスのきつく握られた拳が細かく震えだした。
 アレックスには状況がさっぱり分からなかった。確かにさっぱり分からなかったが、ミカンが散らばるこの艦橋の惨状を見る限り、ロクでもない状況であったことは容易に想像できた。
『その責を感じてもらう為に正座で反省をして頂いております』
 インドラは丁寧にアレックスに説明をしようと試みた。
 だがしかし、アレックスは皇女つきの執事である。皇女こそが、仕える唯一の存在であり、皇室こそが崇拝の対象であった。
 アレックスには到底この状況に対する怒りを鎮めることなどできなかった。
「ミカンごときで皇女殿下に正座を強いるとは何事ですかぁっ!」
 皇女つき執事アレックス75歳。こいつも人の話を聞かない男であった。
 
『いいですか、シュウ』
「あっはい……」
 ミカンが散乱しまくった艦橋を掃除しているシュウの手が止まる。
『掃除は続けて下さい』
「……おう」
『惑星ラキシスの事をどれくらいご存知ですか?』
 シュウはミカンの薄皮がこびりついた床を、デッキブラシでゴシゴシと擦りながらラキシスの事を思い出そうとする。
「よくは知らんな。辺境の自然豊かな惑星だってことくらいか」
『そうですね。しかし、わたしたちの隠れ家があるショゴス星系とさほど遠くない位置にあります』
「だな。オレたちも身を隠さなきゃいけないから田舎住まいだし」
『ここでアルセナ皇女に恩を売っておくのも、決して悪くない案だとは思いませんか?』
 インドラの言葉にシュウはため息をつく。
「お前なぁ、亡命の皇女に恩売ってもしゃぁねぇだろうが」
『しかし彼女がラキシスの奪還に成功した場合、わたしたちの恩は何倍にもなって返ってくるでしょう』
 インドラはいたって大真面目な口調である。
「ありえねぇだろうが。奇跡なんて起きやしねぇんだよ。世の中そんなに甘くねぇっての」
 いつの間にかシュウのデッキブラシが止まっている。
『奇跡と言うほど確率は低くないのかもしれません』
「なんだよ?あの皇女様が無敵の戦士ってぇの?馬鹿らしい」
 デッキブラシに体重を預け、シュウはふふんと鼻で笑った。
『伝説の剣豪キトヴァノ・タダケをご存知ですか?』
「んー。アレだろ?恒星を真っ二つに斬ったとかいう胡散臭いの」
 シュウこそ胡散臭さの塊と言っても過言ではないのに、自分の事は完全に棚上げである。
『剣豪キトヴァノは惑星ラキシスの出身です』
「だからってあの女が剣豪ってわけでもねぇだろ」
『いえ、彼女はキトヴァノと同じ砕星柳生流の有段者です』
 沈黙。
「いやいや、おかしいだろ!だったら何で海賊なんぞに捕まった?剣豪皇女なら海賊ぶった切って自分で脱出するだろ」
『それがよく分からないのです。なぜ自分で脱出しなかったのか。あるいは何か理由があるのか?』
「ねーよ。ぜーってーねー。有段者つっても、所詮お飾りなんじゃねぇの?王族だから名誉何段とかいう」
『そうなのでしょうか……』
 少々しょげているようなインドラの声にシュウは若干の罪悪感を抱いた。
「ま、報酬によっちゃ手助けしてやんないこともないけどな」

「と、言うわけで報酬によっては手助けしないこともない」
 すっかり綺麗になった帝釈天の艦橋で、コタツに入って暖を取りながらシュウはそう言った。
 対面には同じくコタツに入ったアルセナが座っている。その右隣には執事であるアレックス。左にはメイド長のリンが控えている。
「皇女殿下、此奴等のよこしまな狙いが分からぬ以上、迂闊に助勢を乞うべきではないと存じますが……」
「アレックス、判断するのはわたしです」
 アルセナはぴしゃりと言い放ち、アレックスを黙らせた。
 数秒の沈黙の後、ネックレスのロケットの中から小指の太さほどの石を取り出した。
「我が国から採れる稀少鉱物【リヴァレンド】です」
「皇女殿下……それは」
 アレックスが不安そうな声をあげる。
「なんだぁ?ただの石っころ……」
 シュウは言いかけて絶句した。
 リヴァレンド。その石は核分裂核融合等の放射性物質の放出や高エネルギーの爆発を発生させずに、強力で広範囲な電磁パルスを発生させる電子戦兵器『ヴァジュラ』の触媒として使われる鉱石である。
 ヴァジュラの存在は地球連合軍の軍機とされ、システムはおろかリヴァレンドの産地等の情報も門外不出とされている。
「まさか、ラキシスがリヴァレンドの産地だったとは……」
 リヴァレンドを触媒とするヴァジュラは、地球連合軍からかすめ取ったこの帝釈天にも搭載されている。しかし、肝心の触媒となるリヴァレンドの入手が困難であったため帝釈天のヴァジュラは封印された決戦兵器として眠り続けていたのである。
『シュウ……』
「あぁ、分かってるって」
 アルセナが取り出した小指ほどの欠片で、ヴァジュラは10発程度の発動が可能である。
「わたし達の目的は財宝だけではなく、次期君主国璽の奪還」
 シュウは飲みかけていた緑茶をぶちまけた。
「きったなっ!」
 アルセナがあわてて飛沫を避けて飛び退る。
「お前、国璽まで奪われてたのかよ!!」
「そうよ……」
「なんでそんな大事なもんをだな……」
「しょうがないでしょ?あの時点であのアホの海賊どもは、あたし達がラキシスの亡命者だって知らなかったの。もし知ってたら絶対あたし達をトラント将軍との取引材料に使うわ」
 確かにアルセナ達の乗っていたクルーザーはエンジン部分を破壊されていた。例え剣豪皇女が白兵戦に勝利したとしても、海賊船をまるごと強奪しなければ逃げる事など不可能だっただろう。
「それにこのリヴァレンドを奪われるわけにはいかなかったしね」
 次期君主国璽よりも重要な戦略兵器の触媒。存在は確かに大きい。
「そんな大事なもんを、オレたちに渡そうってぇのか?」
「アホの海賊どもに渡すよりは百倍マシよ」
「んだと?何だその言い草は?!」
「何よ?報酬は出すのよ?それともそれじゃ足りないってわけ?」
 シュウは一瞬、出掛かった言葉を飲み込んだ。フンと鼻で笑う。
「こいつでじゅうぶんお釣りがくるぜ」
 シュウはニヤリと笑ってアルセナに手を差し出した。
「交渉成立ね」
 アルセナも満面の笑みを浮かべてシュウの手を握り返した。
 
「ほんとに大丈夫なんでしょうね……」
『大丈夫です。シュウは貴女が思っているよりも遥かに有能です』
「ホントかなぁ、不安だなぁ」
 アルセナは腰に下げたライトセイバーを不安気に鳴らしている。
「大丈夫でしょうかねぇ」
 アレックスがハンドガンを解体メンテナンスしながらつぶやいた。
「大丈夫かなぁ」
 アルセナはとても不安そうである。
「紅茶でもお持ちしましょうか?」
 メイド長のリンが声を掛ける。
「あー、飲みたいとは思うんだけど。あんまりゆっくりしてられないかなぁって……」
 艦橋のスピーカーからシュウの声が聞こえてきた。
『あ、どもー。三河屋ですー。えぇ。そうなんすよ。今回、ウチの卸先が面白いもん持って来ましてねぇ』
三河屋って何よ」
 アルセナは眉をひそめた。
『そうなんすよ。艦艇エンジンの燃料タンクに溜まってしまう水をね、抜くんですよ。綺麗に』
 シュウの服に仕込んだマイクの感度は良好で、相手の受け答えも綺麗に聞こえてくる。
「ガソリン車じゃないし。大丈夫なのかな、こんなんで」
『まぁ、まぁ……』
 インドラがアルセナをなだめに入る。
『あ、じゃ、エンジンルームっすね?お邪魔しまーす!』
「マジ?そんなんで入れちゃうんだ……」
「これが彼の能力なんでしょうか……」
 アレックスも流石に呆気に取られている。
「能力なの?相手がアホなだけなんじゃないの?」
 確かに相手がアホなだけのような気がする。それは否定できない。
「皇女殿下、こちらも突入準備は整いました」
 アルセナが振り返ると、そこにはいつもの侍女13名がコンバットスーツに身を包んで敬礼をしていた。
「やっぱり様になってるわね」
 アルセナが微笑む。
「有難きお言葉。我らティンダロスハウンド部隊、皇女殿下のため命を賭して国璽を奪還致します!」
「お願いだから無理はしないでね」
「久しぶりの戦場ですな」
 アレックスは手早くハンドガンを組み立てるとホルスターにねじ込んだ。
「アレックスも、もう若くはないんだから」
「はっはっは。痩せても枯れても『衛星落とし』。シューティングスターの二つ名は伊達ではありませんぞ」
 アレックスはやる気満々で力こぶを作ってみせた。
「じゃ、もう一度段取りを確認ね。シュウがエンジンルームで電磁パルス爆弾を炸裂させるのと同時にわたし達が突入……」
 帝釈天から電磁パルス砲を撃つという案は却下された。シュウ達が地球連合軍に発見されるのを恐れたからである。代わりにシュウが直接海賊船に乗り込んで、小規模な電磁パルス爆弾を仕込むという段取りになったのである。
「いいわね?じゃ、各自所定の位置へついて」

 30分後、海賊船のエンジンはシュウが投げ込んだ電磁パルス爆弾により沈黙した。動かぬ棺桶と化した海賊船は帝釈天の主砲により武装をもぎ取られた。そして、海賊たちは剣豪皇女、衛星落とし、ティンダロスの猟犬による強襲で壊滅したのであった。皇女の財産と国璽に関しては、無事に奪還できたことは言うまでもない。
 この後この一行は惑星ラキシスへ赴き、トラント将軍の軍事政権を打倒する作戦を展開する事になるのだが、それはまた別の話。
 
-未完-
 

あとがき
 どーも、気付いたら締切が過ぎちゃってました。大変ご迷惑をおかけしております。
 今回のコンセプトは「お茶の間ドタバタスペースオペラ」となっております。
 お気づきの通り「場」は戦艦帝釈天の艦橋だけ。お茶の間アットホームな雰囲気を崩さないようスペース・オペラしてみました。
 グラサンスーツ姿の「戦艦ちょろまかし」ペテン師、剣豪「恒星斬り」皇女、衛星落とし「The Shooting Star」執事、メイド部隊「ティンダロスの猟犬」というネタだらけの濃いキャラ達の活躍は、今後も続くように見えますけど、続かないと思います。たぶん。