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White Noiz

諸々。

短編小説

龍の泉-7

祠に手を合わせて聞いてみたけれど、やっぱり答えはどこからも返ってはこなかった。 リカコは思う。やっぱりあのお爺さんの言う通りに龍之介にも聞かなきゃ。 リカコは龍之介が入った小さな水槽を手にして岩場の対岸へと向かった。泉の入り口側から回りこん…

龍の泉-6

見たこともない光景が目の前に広がっていた。 5月の強い陽射しは青々と茂った常葉樹にその殆どを遮られ、その間からこぼれ落ちた光は、フィルターを透過したかのように緑と青を強めている。彩られた光はこんこんと湧き上がる泉の水面に落ち、仄かに青いきら…

龍の泉-5

アキラが練った作戦はこういったものだった。 まず、イノシシが出た見晴らしのよい丘から、100メートルほど下った所にゴールネットで罠を作る。アキラは昨日下山する時にしっかり地形を確認していたようだ。 そこには竹林があり、吊り上げ式の罠を作るの…

龍の泉-3

目の前に青空が広がっている。視線を下に移すと、そこにはいつもは自分たちが生活している街が見下ろせる。三人が住んでいる幟町(のぼりまち)だ。その幟町の真ん中を横切るようにして龍玉川が流れている。三人の足元、山の麓から緩やかなカーブを描いて龍…

龍の泉-2

きっかけは、リカコだった。 四月も半ばを過ぎて部活の勧誘活動もようやく一段落した頃に、アキラとリカコは共同で宿題をやっつけるためにユウトの家に遊びに行く習慣を復活させた。 小学校から続いていた習慣で、勉強が出来るユウトのノートを二人が自分達…

龍の泉-1

強い日差しが照りつけている。下生えの草花は青々として茂って、常葉樹から溢れ落ちた木漏れ日が斑に色を飛ばしている。 5月の連休明け。もう夏に入れてもいいのではないかと思えるほどの真っ青な空の下、月越山の遊歩道を三人が登っていく。 先頭を歩くの…